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時計の優しい話

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「さぁ、今日も紙芝居の時間だよ。時間のある子は聴いておいで」

 公園でおじいさんが語る紙芝居。子どもが好きそうな柔らかい笑顔で話すおじいさんの周りは、いつもたくさんの子どもたちでいっぱいです。

「今日は時計の話だよ」

 語り出したのは、古い時計の話。昔から今へ時を刻む、大きな柱時計の、優しい話。

 

 📕

 

 昔から、この街には、街を見守る大きな時計がありました。

 ちっくたっく、ちっくたっく。

 その時計は、人々に寄り添うように、生活の一部であるかのように時を奏でておりました。

 この時計を守るのは、持ち主のおじいさん。

 おじいさんは、子供のころからずっと、この時計と一緒に過ごしてきて、時計のことが大好きでした。

 そして、時計もこのおじいさんのことが大好きでした。

 

 おじいさんが小さかったある日、おじいさんが迷子になっていなくなってしまったことがありました。

 小さいおじいさんのお父さんやお母さんが、慌てて探しますが、なかなか見つかりません。

 日が暮れて、辺りが暗くなったころ、時計は思い切って小さいおじいさんを探しに行くことにしました。

「えいっ!」

 小さいおじいさんのことが心配で心配でたまらなかった時計は、人形の姿を借りて、おじいさんを探しに行きます。

「どこにいるのー?」

 なかなか見つかりませんが、時計はあきらめません。

 やっとのことで見つけたとき、小さいおじいさんは寂しくて泣いていました。

「こわかったよー、さびしかったよー」

 泣いて時計にしがみつく小さいおじいさん。

 手をつないで、やっとのことで家に帰った時、もう小さいおじいさんは泣いておりませんでした。

「時計がいてくれたからこわくなかったよ」

 お父さんもお母さんも、時計に感謝して、これからも大切にするよと、汚れた時計をきれいに拭いてあげました。

 

 それから月日は流れ、おじいさんは、本当のおじいさんになりました。

 時計は、ずっとおじいさんのそばにいて、ずっと時を刻んでいます。

 ちっくたっく、ちっくたっく。

「わしもずいぶん歳をとった」

 おじいさんが時計を見つめる眼差しはとてもやさしくて、あたたかいものでした。

「おまえさんが、ずっと一緒にいてくれたから、寂しくなかった」

 おじいさんが小さいときに、時計に伝えた言葉を改めて伝えると、時計はとてもうれしそうに笑います。

 ちっくたっく、ちっくたっく。

 おじいさんも、そんな時計の様子を見て、なんだかとてもうれしくなって、一筋の涙がこぼれました。

「どうして泣いているの?」

 うれしいのに泣くなんて。時計は不思議に思って、おじいさんに聞きました。

 おじいさんは、

「まだまだ一緒にいたいんだがのう、どうやらお別れの時がきてしまったようだ」と答えました。

「悲しむことはない。人はみんな死ぬものだ。そして、おまえさんはそれを見守るんだ。わしがいなくなっても、変わらずに時を刻んでおくれ」

 悲しそうな顔の時計に、おじいさんはほほえみ、そして、静かに眠りにつきました。

 時計は悲しくなりましたが、おじいさんが言ったとおりに、時を刻み続けます。

 ちっくたっく、ちっくたっく。

 

 時計は、それからもたくさんの人を見守り続けてきました。

 楽しかったり、喜んだり、悲しかったり、怒ったり。

 たくさんの人のたくさんの生活を見守り、今も時を刻んでいます。

 ちっくたっく、ちっくたっく。

 君たちのそばにも、この時計のように、君たちを大切に見守るものがあるかもしれないね。

 

 ⌛

 

「今日の紙芝居はどうだった?」

 おじいさんが家に帰ると、小さな人形が明るい声をかけました。

「みんな、喜んでくれてたよ」

 人形は、おじいさんの返答に満足そうに頷くと、その場でうれしそうに飛び跳ねます。

「今日は何の話をしたの?」

「今日はおまえさんの話をしたんだ」

 おじいさんは、人形の頭を優しくなでると、そう答えました。

 ちっくたっく、ちっくたっく。時計の音が響きます。

「これからも、この街を見守ってておくれ」

 そう言われた人形――時計は、おじいさんに笑顔を向けて、深く頷きます。

「これからも、みんなと一緒にいるよ」

 そのとき、そこにはとてもやさしい時間が流れていました。

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